【サッカー/インターハイ/東北大会決勝 遠野1-0青森山田】
2023年6月20日、サッカーの高校総体(インターハイ)東北大会の決勝で、岩手県の遠野高校が青森県の青森山田高校を1-0で破り、19年ぶりに東北大会を制した。
前半は互角の戦い。
フィジカルに勝る青森山田が自分たちの強みであるスピード・アジリティ・ボディコンタクトからゲームを支配しようとするが、対する遠野高校は自信に溢れるボールテクニックと選手間の連携、そして飽くなきランニングで対抗する。
この試合で唯一の得点は、遠野がピッチ中央付近から左サイドを経由してドリブルで持ち込み、PA左から上げたクロスが、青森山田のDFに当たってゴールに吸い込まれるというものだった。
前半に生まれたこのゴールから、逆に青森山田のスイッチが入る。
明らかに選手のプレースピードやプレッシングの圧力が上がったのが伝わる。
しかし遠野高校のプレーヤーは動じない。相手のプレー強度が上がったのに対抗してプレー強度を上げようとはせず、しっかりと自分たちのやるべきことを続けている。
すなわち、しっかりとボールを保持してパスをつなぐ。出せるときは前に出してゴールを狙う、ボールを奪われたら全員が素早くバックしてエリアを守る。
後半も半分を過ぎたあたりから、青森山田は攻めの鬼となる素顔を見せる。
つまり、バスケットならオールコートプレスと表現するだろうピッチ全面でのプレッシングからボール奪取して、相手ゴール前にフィード。
あるいは、ロングスローインでゴール前にフィード。
青森山田は、本当にこれだけに徹底した。中盤の人数を減らしてPA内の前線を増やし、ロングボールやスローインを使って少ない手数で相手ゴール前にボールを入れる。
ゴール前の混戦でボールが跳ねた回数の分だけ、何かが起こる確率は高まっていく。
こういうときの青森山田のサッカーは、確率論なのだと思う。
相手ゴール前にボールがあって混戦模様になれば、ゴールの確率は高まる。
この確率論的アタックが高校サッカーにふさわしいかどうか、たびたび指摘を受けてはいるが、今年30周年を迎えたJリーグの歴史でも、ロングボール主体のチームが席巻していた時代もあり、また青森山田高校もこのプレースタイルだけではないことから、批判は必ずしも当たらないと筆者は考える。
いずれにしても、遠野高校は自分たちのスタイルで最後まで守り切り、この確率論に勝った。
勝った負けたは時の運。
勝負ごとに100%は無いのだから、確率的には負けることもある。この試合の青森山田はそういう確率だった、という話である。
高校総体は都道府県大会、ブロック大会を経て、夏休みには全国大会が開催される。
青森山田高校にはリベンジのチャンスがある。
そして、そのことを一番理解しているのも青森山田高校の選手監督なのだろう。
梅雨の雨交じりに、暑い季節は始まったばかりだ。(ダベリィマン)
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